北限のブナ林自生地 黒松内 ②

2014年10月13日 14:22

 

 ブナ(シロブナ)は落葉広葉樹林を代表する樹種で、九州の桜島の南にある高隅山(1,223m)を南限として、北海道・渡島半島の黒松内低地帯(歌才ブナ林のところ)を北限としている。年平均気温は10℃前後、降水量は年1,000数百mmのところ、そこは冷温帯域で、高さでは山地帯といわれ、東北の山地や日本海側気候の雪積地帯がメインの住処です。


      

             ブナ北限の黒松内低地帯 歌才ブナ林

  

 関東中部域に登山をすると、カヤ、モミ、シデ、コナラが終わってミズナラに出会ったあとウラジロモミとブナの世界「ブナ帯」が現れる。(もちろんその途中には、アオキ、シロダモ、ダンコウバイ、フサザクラ、チドリノキ、シデ、イヌブナ、ミズキ、ハリギリ、ヤマザクラ、ホオ、ミツバツツジ、マンサク、リョウブ、ツガ、ヒノキ、アセビ、ヤマハンノキ、ウリハダ・イタヤ・ハウチワ・ヒトツバカエデ、など、ほか様々なものたちがいます。)


 この1,200m付近のブナ帯を越えて1,500~1,600mになるとツガはコメツガに変わり、亜高山帯のシラビソ、ダケカンバの世界となってゆき、オガラバナ、ネコシデ、ミネカエデ、ナナカマドの住処に入ります。そして森林限界を越えてタカネザクラ、ミヤマハンノキ、ハイマツたちがいる高山帯にいたります。

 

 さてブナの北限は地球の気候変化によって北上と南下を繰り返し、最後の氷期に東北南部にまで後退したが、津軽海峡を越えて函館付近に上陸したのはおよそ6,000年前。さらに現在北限である歌才ブナ林付近に到達したのはおよそ1,000年前と考えられている。大まかな単純計算をすると、ブナは年間約20mの早さで渡島半島を北上したことになります。(黒松内町ブナセンター資料も参考にした。)


                  

  沢山の地衣類などが着いたブナ、下方は雪で埋まる

 

 ブナ(シロブナ)にはもう一種類、樹皮が黒褐色なのでクロブナといわれる「イヌブナ」がいて、東北・岩手県までの太平洋側を住処としシロブナと棲み分けをしています。またブナ(シロブナ)の樹皮は滑らかな灰白色で、雪積が多い場所では地衣類が激しく着き、白や緑色のモザイク模様になっています。その地衣類の付着状況が変化するラインから雪積深が分かることになるのは(上写真)面白いことです。 地衣類は、菌類と緑藻やシアノバクテリアとの共生体で、特殊な栄養法を獲得した 今では菌類に分類されるものです。。                         

             

  毒キノコのツキヨタケに食べられているブナ  右ブナの根際にはヒトヨタケ   
  右のブナは樹齢280年、径150㎝(伐られた後に計測した)

 
 私が通う群馬県のブナ林では、10月になると、ブナの枯死木から沢山のツキヨタケ、ブナハリタケが、また根際からヒトヨタケが湧きだしてきます。その様子を眺めていると、ブナ林の養分豊かな土壌によって育てられたブナは、キノコたちにとって何よりのごちそうなのだろう、と思ってしまいます。 

 

  

食べられ朽ち果て倒されて、別のキノコたちに分解され森の土に還っていきます。そこには大きな空間が(ギャップ)が出来、太陽の光が差し込んで、森はダイナミックに変化していきます。

つまり、この森林世界を仕切っている支配者はキノコ(菌類)なのです。