日本人とオオカミ

2016年07月17日 12:29

 

           

     北海道・旭山動物園  シンリンオオカミ(カナダ)

 

【 オオカミが消えた 】

 日本の森林生態系の頂点にいたエゾオオカミは、明治期の急激な人口増加(明治2年・6万人、34年・100万人)による生息・遊動域の分断、乱獲によるエゾシカの減少によって、生きるために新冠御料牧場の馬を襲ってしまった。その結果、人間によって積極的に殺されて明治29年頃に絶滅した。

 ニホンオオカミも明治38年 奈良県東吉野村鷲家口に持ち込まれた雄オオカミを最後に消えてしまった。オオカミは広い連続した生息域が無いと生きてはいけない。

 両オオカミとも、結果的に人口増加・開発・活動域分断などの、生息・遊動域に対する人間圧によって生きる道を絶たれてしまった。日本列島が大陸から分かれた時から棲んでいたオオカミが日本から消えてしまったということは、日本にはもうオオカミが棲めるような大自然が無くなったということだ。100年前は1年間に1種、現在では年間・4万種がこの地球から姿を消しているという。その最大の原因は、野生生物が生息する緑の自然環境・生態系を人間が破壊しているからなのだ。

              《  京都大学霊長類研究所・相見満, 山形大学環境保全センター 》

 
【 シカの増加 】

 2016年6月1日、バランスを崩した自然の行方というサブタイトルの、「シカ問題を考える:ヤマケイ新書(高槻成紀:著)」を手に入れた。これは「生物界をつくった微生物」を購入したときに併せて衝動買いをしたもので、著者がいうシカはニホンジカのことであり、目次には「シカによる農林業被害」や「シカが森を食べる」などがあった。
 環境省の「ハンターの数とシカ捕獲数」の資料から、ハンターの数が急減少した時期の、1990年辺りからシカの捕獲数が急上昇 (シカの生息数が増加?) している、と著者は述べていた。
 過去20年のシカの急増について、原因は(背景)は何なのか? 森林伐採、オオカミの絶滅、ハンターの減少、温暖化などの要因を検討したが、どれにも時期的なずれがあるという。 著者は、結論として農山村の人口減少にあると述べていた。

 

        

    南アルプス、聖平 に生きる トリカブト(紫色)

 

 ここで、捕食者オオカミの絶滅は100年ほど前のことであり、シカの急上昇とは対応しないというが、いま亜高山や高山の植物は荒らされている。もしも捕食者オオカミが生きていたら日本の山野はどうなっていたのか?と考える。

  

  『 シカの食害から高山植物を守る』、私が出会ったのは南ア聖平(2,300m)であった。そこでは高山植物が広くネットで囲われていた。その外側の見渡す限りの山腹に有毒物質を持つ沢山のトリカブトが生きていた、二ホンジカは有毒であることを知っていたのだ。

   ここで南アルプスのこのような高所で、高山植物の保護活動をしているボランティアグループがあることを初めて知った。

 

         

 

 またかなり以前から、関東近辺の 1,000m前後の山では、二ホンジカがリョウブなどの樹皮を食べ、尾根には下層植物はほとんどなく、シカが食べない有害物質を持つアセビ(馬酔木)が目立って見られる。また低山に住んでいるニホンジカが、新葉の開花全線に合わせて高山に移動するという。ライチョウの餌がなくなってしまうではないか、と心配してしまう。
 ニホンカモシカはもともと寒冷な積雪地も生活場所であったことを考えると、高山域で目立っている植物被害のほとんどは、近年に増えすぎたニホンジカによるものと思われる。

   最近そのようなことが気になって、以前にまとめた「オオカミ」のメモを見直してみた。日本人とオオカミはどんな関係にあったのか?
    

   メモ ⇒ 資料 シ⑥ 日本人とオオカミ.pdf (418747)

 

      

    群馬県  玉原の山中で出会った ニホンカモシカ [白毛で覆われていた]

  旭山動物園、シンリンオオカミIMG_0266 (2).JPG (366746)

 

                              

                                                                                                  2016(平28).7.17