樹木の生きる場所 ① タブノキ 《 水上勉・飢餓海峡 》

2015年09月23日 22:03

 

      

      タブノキ北限の地                  望遠でタブノキを見上げる

        青森県岩崎村・武甕槌神社

 

《 木の名前、花の名前も分からなかった 》

 

 私の初登山は17歳、山梨県の乾徳山だった。それから数年のうちに、5月の八ヶ岳縦走(真教寺尾根から)、8月 北ア 穂高.涸沢合宿、10月 南ア 白根三山縦走(池山尾根から)、12月 富士山.冬山訓練、正月 南ア.北沢合宿(仙丈・甲斐駒 )、4月 南ア・全山縦走 サポート荷揚げ. 三伏峠小屋、・・・3月  北ア 鹿島槍.天狗尾根から縦走、そして5月の朝日連峰.全山縦走(鶴岡から)と、急激にわき目も振らずにエスカレートしていった。 3月27日は卒業式だったが、鹿島槍の山行を優先したので出られなかった。 しかし悔いのない、登山が全ての青春時代であった。そのために振り返えってみると、木の名前も花の名前もほとんど分からなかった。

 

《 樹木の生きる場所 》

 

   晩年、森林インストラクターになってからの普段の登山は、木の落ち葉を拾い歩く落ち穂拾い登山であった。樹木の名前を覚えるために、腰に付けた小さなビニール袋に、これはと思うものをどんどん詰め込む。後に高度計を併用してこれを繰り返すうちに 

  どこの山にも 同じ者たち(種)がいる どこの山でも ほぼ同標高には同じ者たち(種)がいる 低山帯で出会う者、山地帯、亜高山帯、高山帯で出会う者たちはそれぞれに異なる(二領域をまたぐ者もいる)。  生き物だから彼らにも、気温空中湿度などの気象や自然環境に対する好みがあることが分った。

   

           

       甲斐駒ケ岳山頂(2,967m)        聖岳山頂(3,013m)直下 
     手前・ハイマツ、奥・ミヤマハンノキ  左・ミヤマハンノキ、右・ハイマツ                   

 

 南アルプスの冬季風雪の世界、甲斐駒ケ岳の山頂には、ハイマツとミヤマハンノキが並んで生きていた。同じく南アルプス南部 聖岳の山頂直下には、ミヤマハンノキとハイマツが強風を避けるように生きていた。中部域でナナカマドは2,000m辺りから、カラメルと柑橘系の複合芳香を放つシラビソ林は、2,000m~2,400m辺りの亜高山帯でよく出会った。そんなことから、樹木の生きる場所や自然に対する生命力、食害者に対する防衛能力などに関心を持ってしまった。


                                                  

        

      月山のウラジロナナカマド      奥秩父・木賊山付近のシラビソ林

  

 

《 下北半島のタブノキ 》 水上 勉   飢餓海峡

 

   そのころ購入していた「週刊日本の樹木」第26回配本はタブノキであった。表紙見開きに、  水上勉の代表作「飢餓海峡」の舞台である下北半島の中央部に、たもの木(タブノキの別称)が登場する 。しかし「  そこは全くの温帯なので、おそらくハルニレかヤチダモだろう、と推測するのは林学の泰斗、故・倉田悟 博士である。(樹木民俗誌との記述があった。

   小説 飢餓海峡に登場したタブノキとは、どんな樹木なのだろうと好奇心が刺激され、白神岳登山を兼ねて、タブノキの北限といわれる青森県西津軽郡の岩崎村にタブノキを探しに行くことになった。それは平成21年7月のことで、その年にまとめた「森の樹木の生きる場所」のメモを以下のPDFに示しました。樹木たちは自分の好む場所に棲んでいることや、たもの木の北限地を訪ねたときの様子を記しています。ご覧ください。

資料 シ⑮ 森の樹木の生きる場所、 タブノキ(白神)HP用 原稿 ②.docx (1676913)

 

                           

                白神岳登山口

 

          

     ブナ林を進む                 尾根途中から日本海を望む       

 

                     

        

                                        雨の山頂

 

 

                       

 

                                                                            2015(平27).9.23