西沢渓谷森林セラピー基地と田部重治(英文学者、登山家)
2014年10月22日 11:06
笛吹川の源流域、西沢渓谷は秩父多摩甲斐国立公園に位置して、長野・山梨・埼玉の県境を走る奥秩父縦走路から南を見下ろしたところにあります。西沢の流れは国師岳、奥千丈岳の水を集めて流下し、途中で分岐する*東沢の、その源流を辿れば甲武信小屋の水場にたどりつきます。
私の西沢渓谷一周登山は、18歳の昭和39年であったか?、手前の林道に戻るときに渡った、ぐらぐら揺れ上下に弾んだ細いつり橋が、今では車が通るネトリ大橋の僅か上流側に朽ちて見えます。そして時を経て、その西沢渓谷が森林セラピー基地になりました。
平成24年の春には、渓谷入口から30分ほどにある西沢山荘(廃業)周辺のカラマツ林が、チップを敷くなどの整備によって森林セラピーゾーンに生まれ変わりました。これによって、渓谷の中で一番手前にあるブルー色した「三重の滝」を往復する、途中ゆったりとセラピー体験ができ、登山経験がない人でも楽しむことができる4時間のコースができました。
一方渓谷一周のコースは、セラピーゾーンで安らいだのち、序々に運動負荷を上げてゆく森林散歩(森林セラピーの必須プログラム)中の上位ランクメニューに位置づけられます。(約6時間)
[貞泉の滝] [西沢渓谷・核心部の五段の滝]
笛吹川を遡る
・・信州沢から国師ノタル付近にでる・・
大正4年に登山家・田部重治は、笛吹川の*東沢を小暮理太郎らと遡行して、稜線にでたのち梓川の林道を辿り千曲川源流の梓山に出ています。明治40年に陸軍の陸地測量部が剱岳を初登頂?し、まだ探検登山といえる時代の未踏ルートでした。
その後刺激を受けた多くの人がこの東沢の遡行(私も同類)をしています。その厳しくも美しい山旅を「笛吹川を遡る」という紀行文に著わしており、その一節が登山靴の形をした巨石の文学碑に刻まれています。それは先の西沢山荘前の広場の一角にあります(下、左写真)。
[田部重治の文学碑 「笛吹川を遡る」] [東沢・釜の沢の核心部、両門の滝]
* 見よ、笛吹川の渓谷は逼りあって見上げるかぎり
上流のほうへ峭壁をなし、その間に湛える流れの
紺藍の色は、くめども尽きぬ深い色をもって上へ上へと
つづいている。
流れはいつまでかくの如き峭壁にさしはさまれているのだろうか。
[紀行文から抜粋]